どうして英語でセミナーや学会発表をするのですか?
答え:
科学における共通言語は、英語をおいて他にはありません。これはたとえば、「21世紀:知の挑戦」などで“教養”の問題を提起している立花隆氏らも強く指摘しているところです。そもそも、この文章を読んでいただくために利用しているインターネット自体、英語を基盤とした通信言語を介して行っているわけで、英語を自由に使えることは、科学をやる者にとっては箸やスプーンを使うことに匹敵します(あるいはそれ以上か? 手でも食べれますから)。
にもかかわらず、現在の日本の大学生・大学卒業生・研究者の英語運用能力は、不十分であり、英米のみならずアジアその他の国の知識人とも対等にわたり合えるとは言いがたい状況です。生物多様性・環境保護らグローバルな問題を扱うことの多い生態学徒としては、最終的にどのような職に就くにせよ、国際的なコミュニケーション能力がいろいろな形で益々必要であり、そのような力を身につけるには日頃からの努力しかないとの認識を持って勉学に励むことが必要でしょう。
「日本人同士なら日本語がよいのではないか」という意見も多く聞かれます。一般人とのコミュニケーションならそれももっともですが、われわれが日夜勉学・研究に励んでいるレベルの科学に関しては、“No.”と言わざるをえません。正式の学会活動で我々が扱っているのは、国際的なレベルの「科学」であり、それは英語でのコミュニケ‐ションこそが本来の形です。多くの専門用語や概念も、まだ日本語に訳されていないものがあるのです。ところが現在大半の研究者・大学院生のレベルでは、「外国に行ってから訓練すればよい」とか、「国際学会に出る時に英語の発表練習をするべきだ」とか言って間に合うほど、余裕のある英語力とは言えません。発表することも、議論することも、研究生活の初めから意識的に努力をしていかない限り、とても十分に身につくものではありません。「見ず知らずの外国人研究者を相手に、私は科学的な説明や議論がどれだけ十分にできるだろうか? あるいはこのままで5年経ったらできるだろうか?」と、自分に問いかけてみてください。
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