もくじ 実験所について 近辺の地理

 利用とアクセス/近辺の地理/施設・設備/沿革


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フィールド紹介

天草臨海実験所は熊本県天草郡苓北町富岡字本丸(北緯32°32'、東経132°02')にある。
富岡は天草諸島中最大の下島の北西端に突出する小半島の柄部にある砂州上に発達した町で、富岡半島は市街地のある柄部と扇状にひろがった東西2.5kmの島状部からなり、東端からは松と常緑潅木の茂った巴崎と呼ばれる砂嘴が弧状にのびて波静かな小湾を抱いている。

実験所は半島の基部東岸の旧富岡城跡である城山の山麓にあり、本館は波靜かな巴湾に面し、山腹の宿舎からは富岡の市街地をはさんで波荒い天草灘の外海と静穏な富岡湾を同時に眺めることができる。気候は温暖で冬もほとんど霜を見ない。海水は対馬暖流分枝の影響を受けて高温高塩分で、冬季水温も海岸近くで10-12℃、沖に出ると14℃を下らない。塩素量は年間を通じて18‰以上、冬から春にかけては19‰を越える。干満差は大きく、大潮時には 3.7m に達する。有明海と外海を出入りする海水は有明海出口の早崎海峡で最高6.5 ノットの急流となり、富岡半島沖でも 2 - 3 ノットを示す。

富岡半島の外海側と早崎海峡に近い通詞島には岩礁海岸が発達し、暖流系生物が豊富である。実験所の敷地に含まれる巴崎には自然状態の転石海岸が広がり、藻食性貝類をはじめとした生物も多く、格好の研究場所となっている。沿岸の岩礁底には八放サンゴ類が多く、漁夫の磯刺網にかかって揚がるが、小型の無脊椎動物もこれらに混じって採集される。ホンダワラ類、クロメなどの大型藻類の群落はよく発達するが、湾内に以前生育していたアマモの藻場は近年絶滅した。実験所正面の巴湾はよく囲まれた二次湾で以前はさまざまな泥地生物を産したが、近年沿岸は埋め立てと護岸のため生物の棲み場所が少なくなり、魚類の給餌養殖のため海底の汚染が著しく底生動物相は乏しくなった。実験動物として入手し易いものは、ラッパウニ、ムラサキウニ(産卵期、夏)、バフンウニ(産卵期、早春)、タイワンガザミ・イシガニ(夏)、アメフラシ類(春ー夏)などである。実験所から数十Km離れた有明海の中央部は、わが国では数少ないナメクジウオ(原索動物)の産地であり、実験生物学の材料として入手を希望する学外研究者の要望も多い。天草下島西岸は石サンゴ類が生育し、特に下島南端の牛深市沿岸では百種近い造礁サンゴの生息が知られ、被度の高いサンゴ群集が見られる。

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